今回は、第二回で紹介したオードロップゴー美術館と同じ敷地内にあるフィン・ユール邸について書きたいと思います。
フィンユール邸とは?
1942年、当時30歳の時フィンユール自身によってデザインし建てられたプライベートハウスです。彼が亡くなる1989年までずっとこの場所に住んでいたそう。その後、2008年にオードロップゴー美術館の一部として一般公開されています。
この家は、デンマークを代表するフィンユールの建築家・家具デザイナーとしての素晴らしさ・魅力を象徴する場所で、フィンユールの魂を肌で感じることができます!
広さ約204平米のL字型の平屋。当時では珍しかったというオープンフロアプラン(仕切りがない開放的な空間)で、大きく設けられた窓の前には庭が広がっています。どこか日本的な雰囲気も感じます。
右の写真はエントランスです。 明るいブルーでペイントされてます。
エントランスから入ってすぐ左側に書斎があります。ここではブラックレザーのOffice Chair, 1965とフィンユール自身のアート作品であるTo krukker, 1934(窓の横に立てかけてあるやつ)を見ることが出来ます。
エントランスから真っ直ぐ進むと、ガーデンルームと呼ばれるスペースがあります。ソファーの右側(写真には写っていない)にはプランターがあり、さらに窓越しに見える庭の景色とインテリアのブルーの統一感が心を落ち着かせてくれます。
写真左の椅子は、Japan Chair, 1958 。広島、宮島の鳥居からインスパイアされたそう。後ろから見た木材の構成や、前から見たブルーのクッションが重なってるあたりが鳥居っぽく見える!!また、この椅子はフィンユール最初の工業生産された家具だそう。
ちなみに、床に敷いてあるカーペットはテキスタイルデザイナーAnna Thommesenによるもの。
ガーデンルームを左に曲がるとフィンユール邸の中央部屋になります。
フィンユール邸の重要な魅力の一つは何と言っても、庭と森から差し込む自然光により現れる空間の表情です!!特にこの空間はフィンユール邸の中でも一番光が入る場所。
そして、なんと天井の色が薄い黄色に塗ってあるのです!!入って来た外光が、部屋の白い壁から黄色の天井へ、さらに天井からの反射光が柔らかい空間を演出します。
オープンフロアなんですが、このように天井の色を変えたりインテリアの配色だったりマテリアル、ペインティングなどにより、空間の変化を楽しむことが出来ます。
写真右のソファは、the Poet,1941、その隣のスタンドライトはおそらくVilhelm Lauritzen(ヴィルヘルムラウリッツェン)のデザイン。ソファーの上部にあるポートレートは、フィンユール2人目の奥さんHanne Wilhelm Hansen, 1946 by Vilhelm Lundstrom。フィンユール邸を建てた時には別の女性と結婚していて、離婚しているようです。うむ、複雑。
これは反対側を写した写真です。
写真左に見えるアームチェアはフィンユールの椅子で最も有名であろうThe Chieftain Chair,1949。実はこの椅子が有名になる前は「ラケットにひっかかった4つのオムレツ」と酷評されたとか。(北欧フィーカより)
奥にある大きいテーブル(Drawing Board, 1950)もフィンユールによるデザイン。天井からぶら下がるペンダントランプは Vilhelm Lauritzen (ヴィルヘルムラウリッツェン)のデザイン。
シンプルなデザインで主張しないんだけど、このランプがあることで空間全体に表情を与えるというか、もやはアクセントという言葉では言い表せない。
ちなみにフィンユールはラウリッツェンの事務所に勤務していたことがあるそうで、このランプの製作時期と被っているとのこと。色々思いが巡りますね。
リビングの角にある空間にはマスターピースと称される椅子、FJ 44,1944(Bone Chair)とFJ 45,1945が!!
FJ 45はアームの曲線が美しいのはもちろん、横から見るとまるで座面が浮いているように見えるのです。なんとこの椅子、たった4時間でデザインしたそう。まさに天才。
ちなみにちゃんと個室もあります。これは寝室かな。天井は日本の家より高いと感じましたが、部屋の広さは狭いです。でも物がない。
また、天井が円形で抜けていて、外光を取り入れられるようになっています。またこの部屋の天井の色は緑色です。自然を感じリラックスできそうですね!!
こちらがもう一つの個室です。こちらは暖色系でインテリアされていました。カーペットは Vibeke Klint によるデザイン。
部屋を見学していて感じたのは、白色のカーテンからの拡散光が本当に綺麗。柔らかいんですよ本当。日本の障子にも通じる所があるのかなと少し思いました。
個室がある廊下を通り過ぎると主寝室があります。
ターコイズブルーのおしゃれな大きいBed,1961と、テーブルランプ FJ Lamp,1963がありました。
このランプ、金属製のシェードの上部に隙間が空いていて光が上部へも漏れるようになっています。また、ダークグレーのシェードは可動なので、配光を調整できるという優れもの。全然古さを感じないデザインに脱帽です。
さらに言うと、このランプは当時デンマークのライティングカンパニーLYFAへフィンユールがデザインしたもの。デンマークの照明関係の会社も色々事情があるようで、今はONECOLLECTIONという所によって作られているそうです。
こちらは主寝室の奥の空間。
部屋の角には暖炉、テーブルの周りにはレザー調のFJ 48とBench Sofa,1948 が配置されております。
ペンダントランプは Poul Henningsens によりデザインされたPH Kontrast,1962 。オレンジ色にラッカー塗装された内部のリフレクターからの夕焼けのような暖かい光と、10枚のシェードからなる全くグレアを感じない光なのです。秀逸すぎる。。。
また、ランプ光源の位置は上下に調整可能らしい。ただ生産コストが高すぎてルイスポールセン社からは現在販売されていないとのこと笑
余談ですが、本当は暗くなった夜の雰囲気も見たかったのですが、日が長くなって来た時期のため出来ませんでした。美術館の方いわく、フィンユールが亡くなった後、奥さんはフィンユール邸にある照明では暗かったので自分で照明を足していたとのこと笑
ますます見たくなってしまった。。。
以上、コペンハーゲンにあるフィンユール邸についてでした!!
是非是非、デンマークに来た際は訪れて頂きたい場所です!!私たちの部屋に対する見方も変わると思います!!そして北欧デザインにますます引き付けられること間違い無しです!!
なお飛騨高山にこのフィンユール邸を再現した高山フィンユール邸があるとのこと。
Finn Juhl (フィン・ユール)
フィン・ユール(Finn Juhl、1912年1月30日 – 1989年5月17日)はデンマークの建築家、家具デザイナー。アルネ・ヤコブセン、ハンス・J・ウェグナーと共にデンマークの近代家具デザインにおける代表的な人物である。1934年にデンマーク王立芸術アカデミーを卒業。1935年、建築家のヴィヘルム・ラオリッツェンの事務所に勤務。1940年ペリカンチェアを発表。1945年独立して事務所を構える。
(Wikipediaから引用)